脊椎

我々は、こどもから大人まで多種多彩な疾患に対し、高度な医療を提供しております。教室のメインテーマであるこどもの腰椎分離症に関しては、早期発見にて早期骨癒合を可能にしております。また、腰痛の続く場合は、経皮的スクリューを使用し、低侵襲で修復術を行っております(図1)。
腰椎椎間板ヘルニアに対しては、局所麻酔で行う全内視鏡下椎間板ヘルア摘出術(FED法)を実践しております。早期社会復帰可能な最少侵襲椎間板手術です(図2)。最近では、腰部脊柱管狭窄症に対しても全身麻酔の困難な症例などを中心として、低侵襲の全内視鏡下除圧術を行っております(図3)。すべりや側弯など変形が強い場合は、固定術を選択していますが、経皮的スクリュー、ナビゲーションシステムや内視鏡併用の固定術を用いて、安全・低侵襲に行っております(図4)。
それ以外にも、頚椎・胸椎疾患、思春期特発性側弯症(図5、6)、転移性脊椎腫瘍、脊椎・脊髄腫瘍(図7)、椎体骨折後の偽関節など、脊椎・脊髄に関するすべての疾患に対し高度な医療を提供しております。

〜徳島に「原因不明の腰痛」は無い!〜

「非特異的腰痛」の正しい認識と現状

「非特異的腰痛」は、「原因不明の腰痛」のことと一般的に理解されていることが多いが、本来の定義は異なっています。非特異的腰痛本来の定義は、腰痛患者に対して注意深い問診と診察を行ったうえで、Red flagsと言われる、骨折、感染、腫瘍、炎症性疾患などによる脊椎疾患が否定され、さらに神経症状を伴わない腰痛のことです。この非特異的腰痛が、腰痛全体の85%程度と大部分を占めています。つまり、「非特異的腰痛」の本来の意味は、簡便に言うと「明らかな原因のない腰痛を一括りにしたもの」であるといえます。これは約20年前の米国の家庭医の調査結果で、正確には「理学的所見と単純X線や採血などの簡便な検査のみでは、すぐに原因が特定されない腰痛が腰痛全体の85%であった」という報告が元となっています。これが日本国内ではどういうわけか、非特異的腰痛という言葉ばかりが一人歩きし、「非特異的腰痛=原因不明の謎の腰痛」と考えられていることが多いため、「85%も原因が分からない腰痛がある」という誤った認識をもっている医療者も、残念ながら少なくありません。
日本と米国では医療保険事情が大きく異なるため、日本のように容易にMRIやCTが撮像できなかった上に、画像診断技術はこの報告が発表された当時よりも格段に進歩してきています。現在、「画像診断や診断的ブロック注射を駆使しても、最終的に疼痛源が特定できない原因不明の腰痛」は、実際はもっともっと少ないと私たちは考えています。
原因不明の腰痛に陥りやすい病態たち(図8、9、10)

一般的に、原因不明の腰痛に陥りやすい病態としては、椎間板性腰痛、椎間関節性腰痛、Modic終板炎が挙げられます。これらの病態は、身体所見と単純X線(レントゲン)だけで確定診断することは難しく、原因不明の腰痛となってしまいがちです。

腰痛治療のためには、まず真の腰痛の原因を突き止めることが重要です。適切な画像診断と診断目的の各種ブロック検査を駆使すれば、本当に原因が分からない腰痛はそれほど多いものではないと私たちは考えています。私たちは腰痛の原因特定に全力を尽くします。

発育期腰椎分離症

早期発見すれば、徳島大学式硬性装具で骨癒合(図1)

腰椎椎間板ヘルニアに対する最小侵襲FED法

局所麻酔、8mmの皮膚切開(図2)

腰部脊柱管狭窄症に対する局所麻酔下の全内視鏡除圧術(図3)

経皮的椎弓根スクリューと内視鏡を用いた低侵襲固定術(図4)

思春期特発性側弯症に対するCheneau装具を用いた保存療法

Cobb角が25度〜40度の場合は装具治療を行います。装具治療は硬いコルセットで体を左右から圧迫して側弯を矯正し、身体が成長するまで側弯を進行させないようにするための治療です。装具治療の目的は進行予防であり、成長期がすぎている場合は装具治療の適応にならない場合もあります。徳島大学整形外科では装着感の軽く、圧迫感の少ないCheneau(シェヌー)装具を採用しています。(図5)

思春期特発性側弯症に対する手術

Cobb角が40〜45度以上の場合は手術が必要となります。手術の目的は①側弯を矯正すること、②将来的な側弯の進行を予防することです。
手術後は退院後から通常の生活に戻ることが可能で、運動は3ヶ月〜半年後から再開することができます。(図6)

手術前

手術後1年

腰椎硬膜内腫瘍(神経鞘腫)に対する腫瘍摘出術(図7)

術前MRI:T1強調像(造影)・T2強調像

術後2年:T1強調像・T2強調像

33歳男性 / 野球選手

A, B)L4/5、5/Sの2椎間に椎間板変性と、High signal Intensity Zone(矢印の白く光って見える部分)が確認できます。

C)L4/5、5/Sの両椎間板に順番に椎間板造影と椎間板ブロックを施行しました。L4/5椎間板ブロック時に疼痛の消失を確認でき、疼痛源と確定診断できました。造影剤が椎間板の断裂部に沿って漏れていることが分かります(矢印)。(図8)

A

B

C

18歳男性 / ラグビー選手 – 腰椎CT 矢状断像・横断像

単純X線とMRIでは検出できなかった、L5/Sの椎間関節の関節症性変化を確認することができます(円)。(図9)

28歳女性 / 総合格闘技選手

MRIでL5、S1椎体内にModic change(円 左;T1強調像で低信号、右;T2強調像で高信号)を認めます。Modic終板炎を表しています。(図10)